Everything's Gone Green

感想などです

ハイローランドに行ってきました

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現在よみうりランドで開催中の「HiGH&LOW THE LAND」と「HiGH&LOW THE MUSEUM」(以下両方まとめてハイローランド)に行ってきました。

 

おれはハイロー大好きなわけですが、周囲のオタクに似たような嗜好の奴がいなかったので、妹&妹の友達のオタク女子に同行させてもらう形に。当日は死ぬほど快晴。うっかり京王線ではなく小田急の方の「よみうりランド前」駅から降りちゃったので、バスで現場まで行くという冴えない移動になりました。

 

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噂に聞いてはいたのですが、ハイローランド、とにかく全体のディレクションが猛烈にしっかりしている上にそれを支えるためのロジスティックスが非常に緻密で、現場ではデザインとそれを支える兵站について考えてしまいました。

 

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現場はステージがあったり飲み食いできたりする「THE LAND」と、ハイロー劇中の雰囲気を再現した室内で衣装や小道具の展示を見られる「THE MUSEUM」に分かれています。これはミュージアム側の入り口付近。

 

知らない人が見るとFalloutみたいなガラクタの山なんですが、「THE MOVIE」のコンテナだらけのセットのイメージを軸に、なんとなくハイロー感のあるデコレーションがされておりまして、とりあえずミュージアムに入る前だけでオタク大興奮。この入り口付近には「でかい旗を振る」という仕事の人が立って炎天下で淡々と旗を振り回しており感動しました。

 

要はこれプレハブやコンテナのまわりにスノコやら工事用の足場やらドラム缶やら古タイヤやら……という雑多なガラクタをくっつけてるだけなんだけど、色味の選び方やウェザリングの的確さによって全体に統一感が出ています。各アイテムをそのまま積み重ねたら産廃の集積場にしか見えないはずなんだけど、完成後にどうなるかをちゃんと計画して各要素を配置して塗装しているので、ちゃんとハイロー的な風景に見える。

 

 

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これも一見するとゴミの山なんだけど、鬼邪高校の展示の一部。右下の方に写っている下駄箱かなんかの扉が、殴られたか蹴られたかして折れ曲がってるじゃないですか。これを見たときにおれは感動しました。この展示をプランニングした奴は「鬼邪高にあるロッカー類の扉は全てベコベコにされている」という想定が見えており、単に下駄箱の扉が取れているのを表現するだけではなく、一旦ヘシ折って展示スペースに配置している!解釈の解像度が高い!

 

 

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キング村山って自分で書いてしまう村山。キャストの山田裕貴さんのサインなんですけど、村山というキャラへの解釈がやはりちゃんとしている。自分でキングって書くような奴です、村山。

 

 

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村山と関と古屋が身長を比べているという写真です。迸る男子高校生感。

 

 

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ITOKAN店内のいたるところに貼ってあるポスターやらチラシ類やらも、なんかいちいち作り起こしっぽいんですよね……。壁に書いてある文字だって版下が必要だろうし、一体どれだけの人数のデザイナーを動員したのだろう。さらに言えばデザイナーの人数がたくさんいればいいというわけではなくて、それら膨大な出力物を統合して解釈にズレが発生しないようディレクションし、会場にいい感じに配置する必要があるわけで、その手間を考えると本当に気が遠くなります。

 

 

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圧巻だったのがこのTHE LANDの方のステージ。山王街というのは東京の東側にありそうな、下町っぽい商店街という設定なので、まず正面の看板は「○○銀座」的な鄙びたテイストに。それがくっついているトラス状のフレームはおそらく鉄道の跨線橋をイメージしたものでしょう。ハイローでは跨線橋は主要登場人物であるコブラ・ヤマト・ノボルの少年時代を象徴する重要なロケーションです。この跨線橋には濃いめに錆びを描き込むことでリアルさと山王街の年季の入り具合を表現。さらにその周辺に提灯を配置することで、「山王街の夏祭り」というデザインコンセプトをどんなバカが見ても一発で伝達することに成功しております。

 

その背後にはグラフィティが施された商店街の壁面が。これによって山王街が治安の悪い、不良たちの溜まり場であることが表現されています。レンガ作りの壁面にグラフィティという取り合わせはどちらかというとアメリカ東海岸、70年代以前のブルックリンなどのすこし古めな雰囲気がありますが、これは山王連合会のデザインコンセプトがアメリカのバイカーギャングのスタイルを明確に意識しているのとリンクしています。現代的な西海岸の不良ではなく、もうちょっとトラッドでクラシカルな雰囲気でまとまっている山王連合会。そんな彼らの根城である山王街の建物は、コンクリ造りではデザイン的に馴染みません。そんな山王街と山王連合会のディテールやデザイン性を、ステージ奥の壁一発で表現しているわけです。すごい。

 

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ステージ脇にはドラム缶やらホイールやら電柱にくっついてる機械やらが置かれたシャッターが。このシャッターにもグラフィティが描かれているのですが、その上に貸店舗の看板!そして貸店舗の看板にも執拗なウェザリングが!おれがハイローランドで一番感動したのはここでした。「不良がたくさんいる山王街だからそれっぽいグラフィティを描こう」というところまでは誰でも思いつくかもしれない。けれどさらにその上に「寂れた日本の商店街らしい要素をもうひとつ盛ろう」という発想は、ハイロー世界のことを見てきたように想像できるディレクターがいないと成り立ちません。そしてその貸店舗の看板を作る際の書体や色の選び方。完璧な仕事。それなのにステージの脇からちょっと離れた、気がつかない人はそのままスルーしそうな位置に貼ってある。ゾクゾクします。

 

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この配電盤とかも、横に立ってるプレハブの土産物売り場の壁なんですよ。ぶっちゃけこれがあってもなくても誰も気にしないと思う。でもこういうディテールを入れる。入れないと山王街っぽくならない、ハイローっぽくならないとジャッジした人間がいる。「架空の世界を再現する」ということに対するこの執拗で的確な仕事ぶり、なかなかすごいことだと思いませんか……。

 

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ハイローランドにたどり着くまでの順路に立っている塀。「祭り」ということで達磨一家をイメージした朱色っぽい赤が塗ってあるのですが、よく見るとフォークリフト用のパレットを立てただけ。それなのにどこか和風っぽいテイストすら感じられるし、全然貧乏くさく見えない。これを企画し立案し実行するというのは一体どういうことなのか。途中からよみうりランドでウンウン考えることになってしまいました。

 

 

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「HiGH&LOW」を展開しているLDHは何事に対してもジャブジャブとお金を使える、その予算規模がすごいと前から言われています。それはその通りだとおれも思います。しかし、ハイローランドに行ってみて、LDHにとって「予算がある」というのは単なる前提にすぎないということがひしひしとわかりました。

 

LDHの真の強みは金を持っていることではなく、ブレのないディレクションによってコンテンツに関係するあらゆるものを立案しデザインできること、そしてそれを実行するためのロジスティックスを用意できることです。お金はそのために必要なものですが、お金だけがあってもハイローランドは完成しません。コンテンツ自体を深く理解し、それをあらゆる客に対してどうやったら伝達できるかをデザインできる人間。そしてそういう人間に仕事をさせることを決断できる人間。予算というのはそういった人間たちに持たせて初めて威力を発揮する武器です。

 

LDHは単に金満でゴージャスなわけではなく、明確な意図を持ってディレクションをできる人間にちゃんと予算をつけることのできる集団であるというのは、もうちょっと意識されてもいいことなのではないでしょうか。というかハイローランドのディレクターをやった人に、今ものすごくお話を聞いてみたいと思っています。