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Everything's Gone Green

感想などです

2/16に見た映画

グリーンルーム

 売れないパンクバンド「エイント・ライツ」。ポシャった出演依頼の代わりに彼らが請けたのは、山の中の辺鄙なライブハウスでの演奏。彼らが車で移動してみると、なんだかライブハウス(ほとんどコンクリ打ちっ放しの山小屋みたいな建物です)のまわりには見るからにネオナチなスキンヘッドがウヨウヨ。おまけに一発目に演奏したのがデッドケネディーズの「Nazi Punks Fuck Off」だったもんだから客席の空気は最悪に。エイント・ライツのメンバーはさっさと帰ろうとしたんだけど、楽屋(グリーンルーム)に置き忘れた携帯を取りに行ったところスキンヘッドたちの内輪揉めで発生した殺人現場を目撃! 目撃者を皆殺しにしようとするスキンヘッドたちから、果たしてバンドは逃げ切れるのか! という映画。

 

 こういうあらすじだけ見ると「フロム・ダスク・ティル・ドーン」みたいな、ポップでバッドテイストな映画っぽいんですけども、実際には狭い室内に監禁されたパンクバンドとその外でなんとか目撃者を皆殺しにしようと画策するネオナチとの間の駆け引きが描かれており、実際には緊迫緊迫アンド暴力。タランティーノロバート・ロドリゲスが出てくると思っていたら平山夢明とボストン・テランが出てきたって感じ。

 

 そこでこいつ死ぬの!? みたいな、登場人物が死ぬ打順自体がどんでん返しみたいになっている感じがあり、次に誰が死ぬのか、どうやって圧倒的不利(なんせネオナチチームは鉄砲をゴロゴロ持っているけどパンクバンドチームは割れた蛍光灯とか消化器とかしか武器がないのだ)をひっくり返すのかというのは見てて大変面白かったです。あと、ネオナチのボスを演じているパトリック・スチュワートがめっちゃくちゃ怖い。部下のスキンヘッドたちにはほのめかすような指示しか出さず、しかし目撃者の抹殺には全力を尽くすという極め付けの悪役を、とても元プロフェッサーXとは思えない悪辣さで演じておりました。

 

 あと、前半1/4くらいの、普通にバンド活動をしている時のエイント・ライツがすごくキラキラした青春ものっぽく撮れていて、血みどろの後半戦との落差がすごかった。ガソリンを盗んだりシケたダイナーで無理やり演奏したりショボいFMの取材を受けたりと、あの前半のまともなバンド活動シーンがあったからこそ、後半で血まみれになるイェルチンくんの姿が光り輝いて見えておりました。ただ、セリフとかで状況を一切説明してくれない映画なので、その辺は集中力が必要。というかおれは集中しててもわからないところがいくつかあった。もうちょっといろんなとこが親切だとありがたかったかも。

 

 

サバイバルファミリー

 これは本当に良作! フジテレビの映画だし主演が小日向さんだしで、ヌルめのコメディかなと思っていたらなんのなんの、おれが間違っていた。ネタ的には「ある日いきなり世界から電気が消えてしまったら、果たして日本の一般家庭の人々はどうするのか」という、もうその一点張りで突っ込んでいく映画なんだけども、とにかくその「電気が使えない」という状況を極限までリアルっぽく(実際にどうなるかとは別問題で)研ぎ澄ますことでお話をドライブさせていくタイプの映画でした。予告にもあったコメディっぽい要素として「腹を壊した小日向さんが野糞をする」というシーンがあるんだけど、これ劇中では何の取り柄もなくてお荷物っぽくなっちゃったお父さんが虚勢張るために子供に向かって「お前らヤワだな〜」とか言って生水をグビグビ飲んだ結果ですからね。笑うに笑えない。

 

 仕事にかまけっぱなしの父親、ろくに会話もしない息子と娘、魚も捌けない主婦、という東京に住む4人家族が、ある日世界中でいきなり電気が使えなくなった(これが本当に「全部」で、電池とかそういうのも全部ダメ)ことでとりあえず食い物や気候に恵まれた母方の実家のある鹿児島を目指す、という簡潔なストーリー。なんだけど、この映画、昨年の「シン・ゴジラ」となんだか合わせ鏡のような内容。

 

 東京という都市に全てを超越した圧倒的存在が"いきなり現れる"ことで人間が試されてしまうシン・ゴジラと、電気という目には見えない都市生活の屋台骨を支える存在が"消えて無くなる"ことで人間が試されてしまうサバイバルファミリー。日本という国の最高意思決定機関を作劇の中心に据えたシン・ゴジラと、普通のサラリーマン家庭という日本の最末端の人間集団にフォーカスしたサバイバルファミリー。という感じで要素自体は好対照なんだけど、どっちも東日本大震災を経由していないと絶対に作れない絵面がバンバン出てくるし、その「試される経過」を通じてキャラクターたちが成長するという(まあこれは映画なんでそういうものといえばそういうものなんですけども)部分も同じ。あと、シン・ゴジラもサバイバルファミリーも、ディテールを描写できるギリギリまで研ぎ澄ますことでストーリーを駆動させる映画だった。なんたってサバイバルファミリーでは電気がなくなったことで同じマンションの独居老人が孤独死する描写まであるのだ。相当突っ込んでる映画だと思う。

 

 あとこの映画、びっくりするくらい劇伴というか、BGMがない。基本ず〜っと環境音。4箇所くらいの場面では音楽が乗っていたけど、とにかく音がないのである。フジテレビの映画なんだし一箇所くらいタイアップした挿入歌とか入るのでは……と思っていたんだけど、そういう要素一切なし。それもやっぱり可能な限り「電気がない」という状況を生々しく描写しようという意図が感じられてよかった。そういえばシン・ゴジラもBGMの極端に少ない映画でしたね。

 

 もうひとつ印象的だったのが、去年のもうひとつの国産映画の傑作「アイアムアヒーロー」とよく似た絵面(車が止まった道路の真ん中を避難する人たちとかその他諸々)がバンバン出てきて、そうか電気がなくなると絵面がゾンビ映画みたいになっちゃうんだ……という気づきもあった。

 

 そういえばこの映画、途中で一箇所藤原紀香が出てくるんだけど、これだけ生々しい描写を積み重ねている映画なのに藤原紀香が出てくる場面だけ、紀香が言っていることも紀香の服装も紀香の動きも、全てが浮世離れした感じになっててめっちゃ面白いです。これが紀香魂……と感心してしまった。この藤原紀香が本当に面白いので、そのためだけにでも見てほしい。見た人はおれと藤原紀香の話をしましょう。