Everything's Gone Green

感想などです

Dr.ストレンジ 恐怖の力道山道場

 アメコミ映画「Dr.ストレンジ」を見てきました。そのDr.ストレンジの話です。ネタバレを含むので見ていない人は読まないでください。

 

 

 死ぬほど傲慢な俺様野郎ながら将来を嘱望された天才外科医スティーヴン・ストレンジ。完全に調子こいていた彼は車の運転中にふとやってしまったながらスマホが原因でハチャメチャな事故を起こし、回復不可能なほど両手がズタボロになってしまいます。治療中にもリハビリの担当者を「お前ただの大卒やろ。おれの学歴はすごいねんで!」と見下しまくっていたりする彼ですが、手が動かないのではどうにもならないので荒みまくった上に貯金もなくなり、噂を頼りにネパールはカトマンズにある謎の寺院「カマー・タージ」に足を踏み入れ、そこでのちに彼の師匠となるエンシェント・ワンと邂逅。厳しい修行の末に幽体離脱とかなんか手から魔法陣みたいなのを出したりとか通り抜けフープみたいなのを操ったりとか、そういうのをできるようになるのであった……という、なんか「Dr.ストレンジ」はそういう感じのお話なんですけども。

 

 我々はもう一人、将来を嘱望されながらも事故でその道を断たれ、そして別ルートで大成した男を知っています。

 

 

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 そう、ジャイアント馬場です。新潟の三条実業高校在学中にスカウトされ読売ジャイアンツの投手となり、二軍と一軍の間をいったりきたりしていた馬場でしたがジャイアンツを解雇されてしまいます。その後大洋ホエールズのキャンプにテスト生として入団した馬場は、ある日宿舎の風呂場で石鹸を踏んで転倒、肩を負傷するという投手としては致命的なダメージを負ってしまいます。

 この怪我が元で野球界をさった馬場。「金がない」という理由で入ったラーメン屋で一人寂しくラーメンを食っていたところ、テレビで放送されていた力道山のプロレスの試合に目を奪われます。「大男の自分が飯を食うにはこれしかない!」と一念発起、藁をも掴む思いで力道山道場の扉を叩くのでした。

 

 どう見てもDr.ストレンジではないでしょうか

 

 映画「Dr.ストレンジ」にはいつまでたっても通り抜けフープみたいなやつを出せないストレンジくんに対し、師匠のエンシェント・ワンは自分の通り抜けフープでストレンジくんをエベレストのてっぺん付近に連れていって着の身着のまま放り出し、「戻ってきたかったら頑張って通り抜けフープみたいなやつを出しなさい。ちなみにそのままだと30分くらいで死にます」と、死に物狂いで練習させるシーンがあります。

 

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 ジャイアント馬場もこれにめっちゃ似ている目にあっています。馬場の練習から「こいつには死に物狂いの力が足らん」と見切った師匠力道山の手により、手足が動かないほどのバーベルを括り付けられた馬場はそのまま便所に蜂の巣と一緒に置き去りにされます。蜂に刺されるのが嫌なら死に物狂いになってバーベルを動かして逃げろ!という、さすがにちょっとどうなんですかというしごきなのです。エベレストに置き去りにされるのもつらいけど、これもけっこうキツいぞ!

 

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 案の定蜂に刺されまくる馬場。

 

 

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 「死に物狂いの力」でほんのわずかだがバーベルを動かす馬場。どうでもいいけど蜂が刺すたびにいちいち書いてある「チク」「チクッ」っていう擬音がかわいい。

 

 

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 頑張れ馬場!出口まであと少しだ!!

 

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 なんとか脱出に成功した馬場は晴れてプロレスラーとしての第一歩を踏み出すことになるのでした。めでたしめでたし。

 

 これ、映画見た人はわかると思うんですけど、Dr.ストレンジの通り抜けフープ習得シーンの雰囲気とめっちゃ似てるんですよ!特にこの力道山が他人事みたいに「だいぶさされたのう」っていう感じのノリと、なんとか道場まで戻ってきたストレンジくんに対するエンシェント・ワンの態度の感じがめっちゃ似てる!嘘じゃないんだよ!

 

 さらに映画の中盤、清廉潔白だと思っていたエンシェント・ワンが実は暗黒時空の暗黒パワーみたいなやつのおかげで寿命を引き延ばしていた(力道山もヤクザや右翼やフィクサー国会議員がひしめく暗黒時空から暗黒パワーを引き出していた)とか、エンシェント・ワンは結局悪いやつに刺されて死ぬ(力道山も赤坂のナイトクラブ「ニュー・ラテンクォーター」で住吉一家傘下の大日本興行構成員村田勝志に刺された傷が元で死んだ)とか、エンシェント・ワンの力道山度数がめちゃくちゃ高くなっていくわけです。この時点でああもうこれ力道山じゃんと確信しました。

 さらにこの映画にはDr.ストレンジとは同門の兄弟弟子でありながら最後には袂を分かち暗黒面に落ちてしまうモルドさんという人が出てくるんですけども、もうこの人立ち位置からして完全に猪木じゃないですか。つまりこの「Dr.ストレンジ」という映画は馬場正平ジャイアント馬場となり、さらに同門の兄弟弟子だった猪木と対立するまでを駆け足で追った映画なのです。MCU、まさか力道山と馬場・猪木という日本人が大好きな要素まで取り込んでくるとは思わなかった……。

 

 ちなみに実質コミック版Dr.ストレンジと言える漫画「ジャイアント台風」ですが、文庫版が2002年に出版されております。さっきの蜂の巣のシーンは元より、エンシェント・ワンこと力道山とDr.ストレンジこと馬場の熱すぎる師弟愛、壮絶すぎるアメリカでの武者修行の様子(おれは対スカイ・ハイ・リー戦がめっちゃ好きです)、サンマルチノと馬場の熱い友情、お前誰やねんという感じですがやたら出てくるミノル少年など、見どころ盛りだくさん。ぜひ読みましょう。

ジャイアント台風―ジャイアント馬場物語 (1) (講談社漫画文庫)

ジャイアント台風―ジャイアント馬場物語 (1) (講談社漫画文庫)