Everything's Gone Green

感想などです

岡崎体育は許しがたいし、EXILEのPVは全然ありがちではない

 ここ数日、おれは岡崎体育について腹を立て続けている。きっかけは石野卓球のツイートで、特に名前は出さないまでも若手ミュージシャンについて苦言を呈している発言だった。「自己紹介でわざわざおれの名前を出すな、風評被害である」という発言で最初は誰の事だかわからなかったんだけど、2分ほどネットをうろついていたら「岡崎体育」というミュージシャンのことを指した発言だとわかった。

 

 どうやら岡崎体育という人は電気グルーヴのファンで、「卓球」を超えるべく、より包括的な概念である「体育」という名前を名乗っているという。その時点でおれは「えっダサい」とちょっと思ったのだが、今思えばそこでやめておけばよかった。勢いでつい、岡崎体育を検索してしまったのである。

 画像検索で目にした岡崎体育の見た目はおれのあまり好きではない人相であった。あまりにもスクールカースト下から二番目の人間が大学デビューでイキった感じそのまんまであった。キョロ充的でありすぎ、面白いことを言わなそうな感じでありすぎた。しかし、世間ではウケているという。邦楽のPVにありがちなことをまとめた映像が面白いという。きゃりーぱみゅぱみゅも褒めているという。おれも中田ヤスタカPerfumeは正直好きだ。食わず嫌いはよくない。おれは岡崎体育の「MUSIC VIDEO」を再生した。

 


岡崎体育 「MUSIC VIDEO」Music Video

 

 以下はそれを見てからの感想である。

 

 まず第一に、本当にこの人は電気が好きで、芸名にするほどの影響を受けているのか、と思った。ウソでしょこれは。

 おれも中学生の時に聞いた「ドリルキングアンソロジー」に衝撃を受け、その後同級生で映画好きサブカル男子のオクムラくんと一緒に教室のラジカセで電気のCDを並んで聞いていた(そして途中でヤンキーによく邪魔をされた)人間である。しかもおれは1987年生まれで岡崎体育は1989年生まれ。ぶっちゃけこの年代は電気のオールナイトニッポンとかには全然間に合っておらず、小学生のころにポンキッキーズ鈴木蘭々ピエール瀧を見るのが関の山だったはずだ。そういう、ド正面から電気の最盛期を見られなかったであろう同じ年代の人間として言わせてもらうが、岡崎体育の「MUSIC VIDEO」のどこに電気の影響があるのかさっぱりわからなかった。

 

 電気グルーヴの凄みは楽曲のクオリティとクソみたいな悪ふざけの両立にある。トラックはあくまでかっこよく、歌詞はえも言われぬ韻を踏んでおり、ねっちょりした卓球の歌声は耳に残り、そしてPVやアートワークやツアータイトルは死ぬほどくだらない。電気はひどい悪ふざけだけのバンド(あえてバンドと呼ぶ)ではなく、格好をつけるところと死ぬほど悪ふざけをするところの緩急を最大限につけることで格好を付けるバンドなのだ。かっこいいところがちゃんとかっこいいからこそ、ドン引きするような悪ふざけが一層光り輝くのである。「下痢便発電所異常なし '83」なんて最悪のツアータイトルをつけてもツアーが成立するのは、その時点で最新のテクノの文法に則った分厚いトラックが聞けるからこそなのだ。

 

 しかし、岡崎体育の「MUSIC VIDEO」に関して言えば、そういった美学は全く感じられなかった。とにかくノリが寒い。「最近の邦楽のPVにありがちなことwwwwww」的な、クソまとめサイトのクソエントリっぽいノリのそのままの内容を、そのまま視聴者に消費させるだけでなんの深みも面白みもない。そしてなにより「お前は電気から何を学んだんだよ!」と言いたくなるのが「歌詞でもPVでもふざけている」という点である。

 電気のPVやトラックで重要なのは、悪ふざけをするのは全体の2/3あたりまでであるという点だ。かっこいい曲には全然関係のないクソみたいな(しかし手間は異常にかかっている)映像を添えるなど、外すのはどこか片側だけであり、もう片方でキッチリ締めるべきポイントは締めていた。しかし岡崎体育の「MUSIC VIDEO」では最近の邦楽にありがちなことを揶揄した歌詞をそのまんまの映像にしてそのまんま同じタイミングで被せており、正直いって「お前どんだけそのまんまなんだよ!」という他ない。あのつまらなそうな人相の岡崎体育に全力で「オモロいやろ!」と言われても、少なくともおれは「全力だなあ」としか思わなかった。楽曲もPVも結局どちらもわかりやすくも中途半端であり、端的に言ってダサい。

 

 そして、「最近の邦楽のPV」には本当にこの岡崎体育の「MUSIC VIDEO」で言われているようなことが起きているのであろうか。確かにマンネリ気味の演出はあるのかもしれない。だがしかし、そういう映像だけでもないはずだ、と思う。

 

 例えば、恐らく現在の邦楽のど真ん中であろうEXILEである。実のところ貧乏所帯ばかりの日本の映像業界において、EXILEは最も金をジャブジャブ突っ込んで派手な映像を製作できる集団のひとつになっており、彼らのPVは楽曲と映像の内容が全く関係ないにも関わらず「金がジャブジャブぶち込まれている」という一点だけでおれの目を引きつけてやまない(おれは金がかかった映像をボンヤリ見るのが大好きなのだ)。この現在において邦楽の代表格であるはずのEXILEのPVはすでに岡崎体育の言う「邦楽のPVにありがちなこと」の枠から大きくはみ出しているではないか!岡崎体育EXILEに土下座しろ!!とおれは思う。

 

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 例えばこのEXILEミーツ西部警察のゴキゲンすぎる一作。ゴージャスかつトリガーハッピーなエグザイルポリスの有無を言わせない説得力。ありがちな「ラブソングのPV」の枠を銃弾の嵐で破壊した怪作である。

 

 

 

 

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 日本版マッドマックスフューリーロードとも言える、おれの大好きな作品がこちら。荒廃した世界に'80年代風の肩パットをつけたEXILEが降臨すればガキも老人も皆ハッピー。しかもこの衣装でChoo Choo TRAINのあのグルグル回る振り付けもちゃんとやってくれる。文句のつけようがないではないか。ちなみにこのPVはフルバージョンがマジで最高なので是非なんとかしてどこかで見てみてほしい。

 

 

 

 

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 こちらはクーデターが起こせるのではないかというほどの人数を集めた群舞が底抜けに能天気な一本。「とりあえずこれだけEXILE感のある老若男女を集めてみました!!」というだけの映像はまるでインド映画とよさこい悪魔合体。本当にそれ以上の意味がほとんど無いところが大変に潔い。

 

 

 

 

 以上、おれが面白いと思っているEXILEのPVをとりあえず3つ並べてみた。雑な反証ではあるが岡崎体育の言ってる事はしょっぱくてEXILEはすごい、ということがおわかりいただけただろうか。制作費がどうのこうのという点ももちろんあるだろうが、現在の邦楽において間違いなくトップクラスに稼いでいるであろうEXILEがこれだけ変な映像を垂れ流している以上、「邦楽のPVでありがちなことwwwwwww」みたいなネタでゲラゲラ笑うのがどれだけ下劣でものを知らない行為か、想像していただきたい。そういう、まるで調子に乗った世間知らずの大学2年生みたいなバイブスを感じさせ、増幅させる安直で考えの足りない岡崎体育が、やはりおれは大嫌いなのである。