Everything's Gone Green

感想などです

ワイスピをスカイミッションまで連続で見た

「車に興味がない」という理由で今までワイスピを避けてたんだけど、アイスブレイクも公開されたし食わず嫌いもよくないなと思い、初代から7作目のスカイミッションまで、ちょいちょい休みを挟みつつ全部見た。

 

初代ワイスピを改めて見た時、正直めっちゃびっくりした。なんというか、おれがなんとなくイメージしていたワイスピは「頭があまりよろしくない上にどちらかといえば所得の低い人にもわかるようチューンされた、高級スポーツカーを使った悪ふざけ」というものだったんだけど、初代ワイスピはなんとストリートレースを軸にした潜入捜査ものだったのである。カーアクションも「でかいトレーラーの周りを車でぐるぐる回りながら銛を発射する」「ドアからぶら下がる」くらい。しかも終わり方も煮え切らない。少なくとも全然陽気な感じのラストじゃない。なんせ主人公の潜入捜査官ブライアンくんが捜査に失敗して警察をクビになって終わるのである。なんだこれと思った。

 

で、初代ワイスピが予想よりずっと地味で華がない映画だったので、逆にどうやったら「潜水艦が氷河をブチ破って飛び出し、ドウェイン・ジョンソンが魚雷を押し返す」という状況になるのか興味が出てきてしまったので全部見たわけである。

 

2作目は、もうこれはマイアミバイスのパロディだなとすぐわかった(ちなみに初代はハートブルーだよと教えてもらって後から合点がいった)。初代に続いて潜入捜査ものだったし。3作目は珍品ながら、まあ車を使ったベストキッドみたいなもんでしょう。日本の学校文化って外国から見るとああいう感じなのかと面白かったし、あとアメリカ人はあんまりドリフトに興味がないんだなというのもわかった。

 

問題は4本目の「ワイルド・スピード MAX」以降である。これまでの3作は、正直軸がブレブレだ。ここで「やっぱヴィン・ディーゼル出しとかねえとダメだわ」という点にみんな気がついたのであろう。ドムはやはりガンダムSEEDでいうキラ・ヤマトなのである。名前はドムだけど。シリーズ全体を支える大黒柱として、このMAXでヴィン・ディーゼルは再浮上を果たす。

 

MAXはシリーズにとって過渡期の映画だと思う。初期のちょっと真面目な雰囲気を残しつつ、カーアクション自体は飛躍的にハデになり、そしてその後のワイスピにとって重要な要素である「ファミリー」概念が前面に出始めている。

 

ワイスピにおける「ファミリー」概念は、平たくいっちゃうと「地元のツレ」の濃いめのやつである。つまりいつメンでありズッ友である。MAXでこの「ファミリー」概念が発掘されてしまい、そしてそれが案外ウケたのだろう。MEGA MAX以降のワイスピはいつものメンバーの人間関係が更新されたりひっくり返ったりしつつ、カーアクションのクソバカ加減だけがどんどんインフレするという方向に進化している。いつメンがズッ友のまま世界規模で大暴れするのがMEGA MAX以降のワイスピなのだ。

 

この「ファミリー」の概念、なんつっても日本人にもわかりやすい。「ファミリー」概念的なものはマイルドヤンキーやワンピースや湘南乃風や地方のショッピングモールのフードコートといった形で身の回りにたくさんある。しかし、ワイスピはその概念をめちゃくちゃ過剰に押し出しつつストーリーを先鋭化させた結果、ある種の詩情を感じさせるところまで到達している。例えばユーロミッションの、めちゃくちゃバカっぽい経緯で記憶を失ったレティと、その恋人であったドムがレースをすることで対話するシーン。あのレースのシーンはワイスピ史上最も美しいストリートレースである(そもそもMAX以降あんまりストリートレースやってないけど)。正直ベッタベタの展開ではあるのだが、おれはあそこで素直に感動してしまった。

 

また、その「ファミリー」概念の蓄積が最も物を言ったのはスカイミッションのラストだと思う。シリーズを一応全部見て、さらにポール・ウォーカーに何が起こったか知った上で、いつもの書体で「FOR PAUL」と画面に浮かび上がった時のエモさは凄まじい。あれはまさにいままでファミリーファミリーと事あるごとにしつこく言い続け、ドムの家の庭で肉を焼き続けてきたからこそ可能になった演出である。

 

おれの実家は岐阜県であり田舎でありヤンキー地帯だったので、こういう「ファミリー」的概念はあんまり好きじゃなかったし今でも苦手といえば苦手なんですが、ここまで徹底して「俺たちは家族だ」って毎回言われ、しかもそこをキーにして泣かしにかかられると「ちょっとわかる……」となってしまう。心の岐阜県民の部分が一定の理解を示しているのだ。少なくともなんでこのシリーズが毎回めちゃくちゃ稼いでいるのかの一端は理解できた。世の中、田舎者の方がずっと人数多いからね。そりゃお客さんも入りますわ。しかも作品ごとにアクションシーンは過剰になっているわけで、そりゃもうウケない要素がない。

 

というわけでスカイミッションまで見たので明日あたりアイスブレイクも見てこようと思います。めちゃくちゃ楽しみ。