Everything's Gone Green

感想などです

4/8に見た映画

レゴ バットマン ザ・ムービー

ド傑作。ぶっちゃけ泣きながら見ました。

 

スーパーヒーローというのは必然的に孤独な存在である。なんせその他大勢と同質のヒーローが出てきてしまっては、それで完成するのはスーパーヒーロー映画ではなく戦争映画になってしまう。だからバットマンは必然的に孤独だ。家族を強盗に殺されているから新しく家族を作ることに対して臆病だし、ブルース・ウェインという正体を知られるわけにはいかない。

 

スーパーヒーローはそういう存在なので、必然的に同質のスーパーヒーロー同士でつるむことになる。ジャスティスリーグアベンジャーズや、とにかくそういう連中だ。『レゴ バットマン』のバットマンがすごいのは、そういうスーパーヒーロー同士の連帯からもその気難しさが原因で排除されている点だ。バットマンは誰とも連帯できず、家族もいない。唯一彼のために気を揉んでいるのは執事のアルフレッドくらい。

 

そんな彼との連帯を望む存在として現れるのがジョーカーだ。アメコミほど「悪とはなにか」ということについて継続的にアップデートが繰り返されてきたジャンルも珍しい。なんせ悪がいなくては正義は成り立たない。住人全員が善人のゴッサムにはバットマンは不要だ。だから『レゴ バットマン』ではジョーカーはバットマンに対して「お前はおれにとって特別な存在だ。お前にとってのおれもそうだろう?」と質問する。が、バットマンは「いや、別にそんなことないし、そこまでお前のことを考えたこともないわ」とジョーカーとの関係を否定する。バットマンは他人と継続的な関係を築くことに恐怖しているからである。そういう意味で、「レゴ バットマン」のバットマンバットマン映画史上最も扱いにくく、純度の高いバットマンである。なんせ彼はサイドキックの存在すら認めないし、連帯しようとした新警察署長バーバラ・ゴードンすらはねつけ、バットケイブに立てこもる。

 

この「レゴ バットマン ザ・ムービー」は、バットマン最大の敵である"自らの孤独"に対し、バットマンたちが如何にして戦いを挑むかという映画だ。実際どうやって立ち向かったかは書かないけど、途中の流れはもう涙無くしては見られない。もちろんレゴ ムービーらしい楽屋オチやメタネタのパロディやワーナーの懐の深さをうかがい知れる悪役陣などオタク大喜びのギャグも満載だけど、全体には上記のテーマが通底しているので、人付き合いが嫌いなオタク(おれ含む)なら刺さる内容であることは間違いない。ド傑作でした。

 

ハードコア

全編主観視点の映画があったらすごくねえ!?という、CoDとかHALOとかをプレイしすぎて頭が悪くなったオタクの一発芸みたいな映画。だが90分もある。

 

日本において主観視点の映像といえば上記のようなFPSゲームとある種のアダルトビデオ(なんかこう、風俗店のプレイを模してるやつとか女優さんがたくさん出てくるやつとか、「ひょっとしたらおれもこういう体験ができそう」もしくは「死ぬまでに一回くらいはこういう目に遭ってみたい」という内容のものが多いですね)なわけですが、この映画もその2ジャンルにすっぽりそのまま当てはまる内容。つまり、動いて暴れて銃をぶっ放して人間を殺すか、R15で上映できるくらいのエロい目に遭うかという、動物かよという感じの内容が全編がぶっ通しで続く。

 

とにかく映像が全部主観視点なので止まると即かったるくなる。会話のシーンとかは目の前で人間が喋ってるだけになっちゃうからシャールト・コプリーがどんどん出てきて喋りながら動いたり死んだりしないと間が保たないし、それだって3分くらいが限度だ。だからこの映画では3分に一回は銃撃戦が発生し、走り回って鉄砲をバンバンぶっ放し、止まることなく人間を殺し続けるしかない! ストーリーなんかほとんど刺身のツマ、戦うことしか知らないマグロの改造人間みたいな映画だ。だからクイーンの「Don't stop me now」が流れるのか。今初めて知った。

 

そういう死ぬほど一本調子の映画なので、正直途中で飽きてくる。おまけに酔う。とにかく主観視点でグラグラ揺れまくる映像が大スクリーンで流れるので三半規管が弱い人間は確実にダメだ。大学時代にサークルの部室にあったプロジェクターで『サイレン』をプレイしたらその場にいた全員の気分が悪くなったことがあったけど、そんな感じに近い。「やっぱ人間安全に体験したいことっていえば暴力とエロでしょ。ヘイリー・ベネットの指舐めサイコー!」って意見には完全に同意だけど、それにしたってもうちょっとなんとかならんかったんかという気持ちになった。

 

ただ、オープニングの「HARDCORE HENRY」ってタイトルが出るところとサントラのセンスはめっちゃくちゃよかったです。あのオープニングだけもう一回見たい。現場からは以上です。