Everything's Gone Green

感想などです

1/22に見た映画

太陽の下で

 北朝鮮の市民の生活を追ったドキュメンタリー……なんだけど、この映画のキモがドキュメンタリーの撮影現場で「演技指導」をする北朝鮮の政府関係者らしき人物の様子が無断で映っちゃってる、という点だ。

 

 詳しくは公式WEBサイトをどうぞ。

映画『太陽の下で』オフィシャルサイト

 

 この映画でグッときたのは演技指導をする北朝鮮当局のおっさんの間抜けさ加減、そしてその合間合間に挿入されている、演技指導されている立場の北朝鮮の普通のおじさんやおばさんの、なんだかボケッとした表情だ。北朝鮮の人たちは特に疑問を抱いた表情を浮かべることもなく、「ああはいはい今回はあのパターンですね……」という感じで撮影班のカメラの前で指導に応じ、若干弛緩した空気を出しつつも、本番では我々がよく見る「躍進!主体思想!偉大なる同志金正恩万歳!」といういつものあのテンションをサッと出してみせる。「あ〜〜〜やっぱこういうの慣れてるのか〜〜〜〜〜〜」と思った。

 

 この映画は「ドキュメンタリーが嘘をつく瞬間を撮影することに成功したドキュメンタリー」である。そこに映しだされる北朝鮮当局の様子はどう見ても滑稽だし、それに付き合わされる北朝鮮の普通の労働者たち(でも多分彼らは「外に見せても大丈夫なレベルの普通の人たち」なんだと思う)はお勤めご苦労様ですという感じである。しかしだからこそ、この北東アジアの巨大なディストピアの様子には息を飲んだ。こんな見え見えのしょうもない演出でも「従わないと死ぬな……」という緊張感はビリビリ走っているし、言いたいことも言えないよな、これは。

 

 それと同時に、この映画もまた撮影者の意図に基づいて編集されたものである。胸に迫るあのラストの少女の涙も、多分撮影されたのは割と最初の方のタイミングなんじゃないかという気がする(論理的根拠はあまりありません)し、そもそも撮影班が密着したあの一家は北朝鮮では比較的裕福な方だと思う。なにが虚でなにが実か、見ているうちになんだかよくわからなくなってくる感じは、ひとつ前のエントリに書いた「ど根性ガエルの娘」にちょっと通じるものがある。ドキュメンタリーの虚実という点に関して何かしら思うところがあるならば、去年の「FAKE」と同じくらい見ておいた方がいい映画だと思う(偉そうですね、どうにも)。

 

ザ・コンサルタント

 これは変な映画!予告やポスターの印象では「昼は会計士、夜は暗殺者!」みたいなダークヒーローっぽい雰囲気だったしベン・アフレックバットマンだしで、「イコライザー」とか「ジョン・ウィック」みたいな感じを予想していったらぜんぜんそんな内容じゃなかったのである。

 

 主人公ベン・アフレックの仕事は会計士なんだけど、実は彼は子供の時から重度の自閉症で、チカチカする光も轟音も肌触りの悪い服も死ぬほど苦手なんだけど元軍人のスパルタ親父に鍛えられて今では立派な表裏両方の仕事を受け持つようになりました……という設定。このベン・アフレックが本当にすごくて、ガチムチな体と完全に死んだ目の説得力が凄まじいことに。そして「一度引き受けた仕事は絶対に投げ出さない。なぜなら彼は自閉症だからだ!」という発達障害を逆手に取ったアドバンテージ、いきなり「ウォーリアー」みたいになる終盤などなど、不思議な構成要素がてんこ盛り。とりあえず普通のアクション映画にはしたくなかったんだろうな……という気分になった直後に「普通……普通ってなんだ……」と考え込んでしまうこと必至。不思議な映画でした。嫌いじゃないです。