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Everything's Gone Green

感想などです

スターウォーズが怖い

 スターウォーズの新作が怖い。かつてない恐怖を感じている。たかが映画をなんでこんなに怖がらなくてはならないのかよくわからないけど、それはおれの中でスターウォーズは「たかが映画」ではないからなんだろう。EP7の公開まであと2ヶ月あまりとなったところで、現在の心境を記しておきたい。

 

 そもそも幼稚園の頃に見たEP4は生まれて初めて見た実写映画で、銃で撃たれて人が死ぬ映像を見たのも、戦闘機と一緒に吹き飛ぶパイロット(特にジェック・ポーキンス)の映像を見たのも、なにもかもをEP4で初体験した。家にあったブロック(我が家はダイヤブロック派だったし当時はスターウォーズのレゴなんてなかった)で幼稚園児だったおれはXウイングを作りまくり、ダース・ヴェイダーに心底恐怖した。

 

 そんなおれは現在28歳。世代的には特別篇〜プリクエル世代のど真ん中で、特別篇は小学5年生の時、EP1公開が中学校の1年生の時で、EP3を大学の1年生の時に見ている。EP2だけはいまだにいただけないが、EP1はそこまで嫌いじゃないし、EP3は大好きだと胸を張って言える。EP1だってジャージャーがアレなのはまあそうなんだけど、でもおれにアメトイを買いあさり横や斜め後ろから映画を見ることを教え、海外のSFファンダムの層の分厚さを叩き込んでくれたのはEP1だった。大体「ジャージャーがうぜえ」ってネタだって、そう言っとけばファンの間の定番ネタに乗っかってる感じが出るからそう言ってるんだろ?って奴ばかりだ。そこまで大騒ぎするほどウザいわけでもないと思うし(ウザくないわけじゃないけど)、アーメド・ベストがイベントに呼んでもらえないのはかわいそうすぎると思う。

 

 ざっくりとおれのスターウォーズ遍歴をまとめてみた。本当にざっくりだけど、まあおれが大層心の広いファンであることは分かってもらえたかと思う。しかし繰り返すがそのおれがEP7に対しては非常に恐怖し、かつ現状に憤っているのだ。

 

 こないだEP1公開直前に出版された『スターウォーズ完全基礎講座』という名著を呼んでいた。R2の発する電子音を解析して何を言っているかを考察するコラムとかが掲載されているキチガイじみた本なんだけど、そこで書き手が「今年で31歳になるスターウォーズ直撃世代だ」というような自己紹介をしている文章を読んでハタと考え込んでしまった。

 

 31歳。今おれは28歳。そしてこの本は1999年のEP1公開直前に出版されたものだ。

 

 つまるところ、1999年はスターウォーズが1977年(日本だと1978年か)に直撃した時に少年だった人々が、今のおれくらいの、アラサー的な年齢だった年なのだ。1999年には中学生だったおれには「ダース・モールかっこいいよなー!」で通過できたEP1も、彼らからすると悲惨な思い出だったのかもしれない。ジャージャーが嫌いで嫌いで仕方ない人も、いても仕方ないのかもしれない。

 

 1999年にアラサーだった人たちはアラフォーになり、1999年に中学一年生だったおれは28歳になってしまった。そして今まさに1999年にアラサーだったオタクたちが感じていたものと同質であろう期待、そして圧倒的な恐怖を感じている。生まれて初めて味わう恐怖だ。先達としての意見を伺おうとしても、すれっからしのアラフォーのスターウォーズプロップおじさんたちは「EP7? つまんねえに決まってんだろ! ガキはおうちに帰ってママとクッキーでも焼いてな!! おれはバンダイのキット組むからよ!」と取りつく島がない。まわりの同世代のオタクたちもスターウォーズなんかロクに見ていないし、スノッブでオシャレで海外のオタクみたいなノリが売りの"映画クラスタ"の皆さんは、やれ吹き替えが芸能人だ字幕が戸田奈津子だ公開スケジュールがウンコだ宣伝がクソだディズニー死ねと周辺事情をツイッターで叩いてまわるのに忙しいのでおれみたいなオタクと話をする余裕はなさそうである。なんだか一番割りを食っている気がしてくる。孤独だ。

 

 以下はアラフォーの公開当時組でもなければ、溢れる知識とセンスを武器にインターネットで暴れ回る"映画クラスタ"にもなれない、どっちつかずのおれが思うEP7の恐怖についての文章である。

 

 今回のEP7、今までに公開されているデザインや予告を見る限りでは製作チームが相当ハイレベルなデザインワークをこなしているのは確かだ。ラルフ・マクウォーリーとジョー・ジョンストンという偉大すぎる2人のアーティストが'70年代の後半に残した仕事を徹底して解析しトレスして、現在の目で見ても通用し、しかもEP4〜6のその先にありそうなデザインを実現しているように見える。ファーストオーダーストームトルーパーのデザインのハイコンテクストぶりはすさまじいし、カイロ・レンのルックスからは「部品点数を極限まで減らして純度を高めたシスの暗黒卿」というコンセプトがビンビンに伝わってくる。例え映画が「JJエイブラムスのスターウォーズ撮影ごっこ」だったとしても、彼らは非常にいい仕事をしているのだと思う。

 

 でも国内ではスターウォーズはもう2線級のコンテンツに成り下がってしまった。EP7のプロモーションの現場には恐らく1977年の公開当時を知っている人間はほとんどおらず、後からとってつけたようなクソみたいな上滑りしたプロモーションと空虚なコスプレでのお祭り感だけがコンテンツとしてのスターウォーズの死臭をまき散らしている。リンクを貼るのも忌まわしいので各自でググって辿り着いてほしいが、BRUTUSスターウォーズ特設サイトはそれらすべての極北、グラウンドゼロ、視界いっぱいに広がるこの世の地獄である。「みんな、スターウォーズが好きで好きでたまらない」じゃねえんだよ! お前はここで死ぬんだよ!!

 

 ハズブロを中心としたマーチャンダイズのダメっぷりもキツい。ここ数年ハズブロは明らかにパワーダウンした熱量の低いフィギュアしかリリースできなくなっており、雑な関節構造、減り続ける付属品、残念な塗装と三拍子揃ったトイばかり連発していたが、スターウォーズのようなフラッグシップタイトルでもその調子なのかとクラクラした。何がフォースフライデーだ。売らないほうがマシみたいなクソみたいなオモチャをドヤ顔でバラまきやがって……。

 

 国内国外含めてどいつもこいつも悲惨な駄玩具ばかり売るなかで、かつてのガルーブ復活の狼煙となるのか、「マイクロマシーン」のブランド名、そしてキャラの頭がガバリと開いてジオラマになるタイプのクレイジーなシリーズが復活したのだけがめでたい。まあオモチャでネタバレ喰らうのイヤだからまだ買ってないんだけどさ……。

 

 これで、これで映画本編がひとつの文句もないくらいめちゃくちゃ面白かったらなんの問題もない。でもそれはまさしくデススターの排気口にプロトン魚雷が滑り込むような確立の低さだろう。もうおれはEP1の時のような純朴な岐阜県の中学生ではないし、スターウォーズをきっかけにして色々と映画に文句をつける見方を覚えてしまった。多分、どこかしら「え〜〜〜っ!?」という箇所を見つけてしまうだろう。そしてスターウォーズは死んでしまったとリアルでもインターネットでも騒ぐことだろう。

 

 そういうキツい通過儀礼を経て人は段々、スレたアラフォーの特撮プロップおじさんへと変化していくのだ。悲しいがそれが人生なのだろう。我々は(というかおれは)まさに今スターウォーズに人生を教わっているところなのかもしれない。ありがとうスターウォーズ